笛吹人バンザイ

No.1 中村友幸さん

このページは、笛吹市内で様々な活動をされている団体や個人を紹介する企画です。第1回目は八代町在住のキノコ研究者、中村友幸さんです。

中村友幸さん

中村友幸さんは現在、韮崎市の応用きのこ研究所の所長をされています。また同時に、近畿大学農学部の常勤講師や、大分大学医学部の客員研究員などもされています。その他、中村さんの見識を必要としている研究機関や団体は引きもきらず、北は北海道から南は沖縄・南西諸島まで、まさに日本全国を飛び回っていらっしゃいます。山梨にいらっしゃるのは週に数日程度とか。本当にご多忙なのにも拘らず、今回の取材に気さくに応じてくださいました。

中村さんは主に、キノコの成分を医療分野に活かす為のご研究をなさっています。キノコには毒キノコ、食用キノコ、薬用キノコとあって、近年、薬用としての有用性に注目が集まっています。人間にとって、毒にもなるキノコですが、毒性を薄めてやれば薬として使うこともできるそう。薬草などと同じ原理ですね。実際、キノコを使った抗がん剤3製品が、厚生労働省の認可を受けているそうです。その他にも向精神薬などの開発も行われています。

かつて抗がん剤はがん細胞のみならず、健康な細胞にまでダメージを与えてしまうことが懸念されていましたが、近年では、がん細胞の特性だけを狙って効果を発揮する薬の研究が進んでいるそうです。中村さんは、メシマコブというキノコの成分が、がん細胞の増殖を抑えるのに効果があることを導きだしました。そして、培養法や、抽出法などにこだわり、いかに有効成分を効果的に取り出せるか、実用化に向けての研究が行われています。

最新のご研究(東京女子医科大学との共同研究)に於いては、メシマコブの培養抽出液が脳梗塞の虚血巣を縮小する効果があることを、学会で発表されました。また、近頃あちこちで猛威をふるっている新型インフルエンザのワクチン開発の研究も依頼されているとのこと。今後の世界的な大流行が懸念される今、急務としてご研究に取り組まれています。さらに、近畿大学の駒井功一郎教授との共同研究で、メシマコブで花粉症などのアレルギー症状を予防するご研究もなさっています。いまや国民病とも言える花粉症に有効なお薬ができるかもしれないのです。1日も早い実用化を願って止みません。

医療的なご研究の他にも、要望のある地域へ出向かれ、食用キノコの開発や、マツタケ山の復興などにも取り組まれています。日本中の多くの人の為に、ご自身の専門知識を役立てていらっしゃいます。

中村さんは八代町の桃農家のご長男としてお生まれになりました。子供の頃、桃畑で見かけるキノコに興味を持つようになったそうです。キノコ研究の道を選ばれたのは、キノコの不思議さに魅力を感じたから。その頃はキノコの研究者はまだ少なかったそうですが、医療用の有効性に注目が集まる今、中村さんには世界中の研究者から問い合わせがあるそうです。今後、益々熱くなっていく研究分野と言えるでしょう。

ずばり、キノコの魅力は?とお伺いすると、「キノコの『分解者』としての役割」とお答えくださいました。倒木や落葉、動物の死骸などを分解するキノコなどの分解者がいなければ、自然界は成り立たない。その仕組みの深さに魅かれるそうです。

一番お好きな味のキノコをお尋ねすると、マツタケ、シイタケとお答えくださいました。意外と普通ですね…。無理を言ってもっと珍しいものではとお尋ねすると、バイリング(別名アワビタケ)とお答えくださいました。エリンギに似た歯ざわりで、エリンギよりも臭みが無く、旨みが強いそうです。

美しいキノコをお尋ねすると、タマゴタケ。不思議なキノコについてお尋ねすると、ヤコウタケとお答えくださいました。ヤコウタケは夜間、森の中で強く発光するそうです。一説によると本も読めるくらいだとか…。想像すると本当に幻想的です。キノコってとても不思議で、そして魅力的なものですね。

今年は雨が少なくて、県内の野生キノコは軒並み不作のようです。それでも、「土から生えるキノコは少ないですが、木から生えるキノコは出ていますよ」と中村さんが教えて下さいました。山梨県は富士山、八ヶ岳に囲まれて標高差がある為、他県に比べてキノコの種類がとても多いのだそうです。探し様によっては、まだキノコ狩りを楽しめるかもしれません。

キノコ狩りに行く時は、蜂や熊に気をつけてくださいとのこと。中村さんたち専門家が行くときは、服装など重装備で行かれるそうです。せっかくの楽しいキノコ狩りですもの、事故があってはつまらないですからね。また、最近では山でのマナーの悪い人もいるようです。ゴミは必ず持って帰ること。キノコのシロを荒らすような採り方をしてはいけません。「『来年も出てきてね』という気持ちで大事にとってください」とのお言葉でした。

また、栽培キノコの廃床培地を桃の畑に堆肥として撒くと、桃の糖度が2~3度上がったなどという笛吹市民には嬉しい情報も教えていただきました。

今回中村さんにお話を伺って、キノコがこんなにも色々な用途に役立っていることを始めて知りました。大袈裟ではなく、キノコが人類を救ってくれるかもしれないのです。今後の研究の中から、まったく予想もしていなかったような効用をもつキノコが見つかっていくかもしれません。栽培困難なキノコもたくさんある中で、森林を多く持つ山梨なら野生のキノコを得られるのです。それは今後、この地域の大きな強みになっていくかもしれません。

キノコは笛吹の、…いえ、人類の宝です。キノコがたくさん生えるような環境にしていけるよう、考えていきたいですね。 (取材:さっさ)

キノコに興味のある方、是非『キノコ鑑定会レポート』もご覧ください

キノコ狩りレポート

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