「甲斐いちのみや大文字焼き」舞台裏レポート

炎、燃え尽きるまで…
感動“大”のアツい舞台裏(その1)

8月16日夜、一宮の夜空を炎で焦がす「甲斐いちのみや大文字焼き」が今年も盛大に行われました。精霊を送る盆の送り火として遠く江戸時代より人々に親しまれてきた伝統行事ですが、その準備などに携わる裏方の仕事となると地元の住民でも知らない人が多いと思います。遠くから眺めていただけでは分からない、麓から見ていただけでは知りえない、華やかな舞台の裏側に隠された大勢の人のひたむきな姿を、3部構成で紹介します。

■準備1日目

【8月7日(金) 曇り一時雨】

急な山道を前のめりになって登り始める

「大文字焼き」の準備作業は、毎年、本番の約1週間前に2日間の日程で行われ、今日がその1日目。午前9時スギ、一宮支所 地域課の内藤さんの道案内で笛吹市南東に位置する大久保山の現場へと向かった。支所から車で約10分ほどの山の麓まで来ると、そこは桃畑が山裾いっぱいに広がるのどかな風景。麓の県道から農道に入り、少し上ったところの林道入り口付近で停車。そこから車を置いて歩いて行くことに。腐葉土の匂いに満ちた急な山道を前のめりになって登り始めると、早くも顔から汗が吹き出す。時々立ち止まっては、エアポンプをはずされた金魚のように、天を仰ぎ口を大きく開けて深呼吸。緑のイイ空気を胸いっぱいに蓄え、気を入れなおしてもうしばらく行くと、その先に林を抜ける出口が見えてきた。光の射す方に向かって最後の急坂を登り切ると、一気に視界が開けた。現場到着、9時30分。辿り着いた場所は「大」の字の一番上の位置。目の前に広がる光景は、甲府盆地が一望できる180度のパノラマだ。

甲府盆地が一望できる180度のパノラマ

現場では、すでに何台もの草刈り機があちこちでモーター音を響かせている。作業にあたっているのは、一宮町内の建設業者3社から集まった13人の職人さんたち。草刈り機の作業は平地でさえ危険が伴うというのに、ましてこの急斜面での作業、「こりゃ足を滑らせたらヤバイな」などと考えてると、そんな心配をよそに「毎年、誰かがハチに刺されてるから、気をつけて!」と、現場を統括する武藤工業の梶原さんから逆に声をかけられた。梶原さんはこの作業に携わって11年の大のベテランの方。ほかの皆も、さまざまな現場で多くの場数を踏んでいるその道のプロ。危険なのはスズメバチの方で、足場は心配御無用ということか。

草刈り機があちこちでモーター音を響かせている

一方、薪の束を山に運び上げる作業が同時に進められている。この日、用意されたのは、富士吉田から取り寄せたというヒノキの薪、550束。運搬車に30束程の薪を山積みにして、朝から何度となく林の中を行き来している。この運搬車、戦車みたいに接地面がキャタピラになっていて、軟弱地や傾斜地を得意とする完ペキなオフロード仕様。とはいえ、補助についた2人が後押しをしなければならないほど勾配はキツく、現場までの道のりは険しかった。

午後3時スギ、草刈りが終わり、今度は運び上げた薪の束を山の斜面に配置する作業が始まった。まず上から薪の束を勢いよくどんどん放り投げ、一旦、仮置き。それから「大」の字を形作る86ヶ所のポイントに皆で手分けして配置した。4時、明朝から作業にかかれるように準備が完了したところで、本日の作業はこれにて終了。

その2へ続く

 

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