境川地区 地域づくり座談会

笛吹市で新たなまちづくりの取り組みが始まりました。境川防災センターで、笛吹市市民活動支援課が主催する「境川地区 地域づくり座談会」が行われたのです。全2回の構成で、2010年11月22日に第1回、12月14日に第2回が行われました。住民の自治意識を高めようと企画されたこの座談会は、まだほんの始まりに過ぎません。しかし、人々の内側から何かを変えていこうという新しい試みです。笛吹のまちづくりをお手伝いしたい「ふえふき旬感ネット」も、もちろん参加させて頂きました。初の試みでありながらも盛況だった座談会の様子をレポート致します。

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40名近い境川住民が参加しました

第1回:2010年11月22日

今回の地域づくり座談会は、市民活動支援講座のプログラムとして企画されました。地域づくりの専門家である2名の講師が進行を手引きしてくれます。「住民自治とローカルデザイン力から地域経営」というテーマを研究され、各地の地域づくりをサポートしている江戸川大学の鈴木輝隆教授と、大阪にあるstudio-Lというコンサルタント会社で集落支援員をしている西上ありささんです。集落支援員とは、主に中山間地域の集落が抱える課題や魅力を引きだし、維持や活性化、時には閉鎖など、今後集落をどうしていくか決めるのをサポートをする仕事だそうです。主催した笛吹市は、従来のような講師から住民への一方的な知識の伝達ではなく、もう一歩踏み込んだ講座ができないかと今回の座談会を企画しました。西上さんは全国各地で楽しいワークショップを行ってきた実績があり、今回進行役として白羽の矢が立ったのです。

江戸川大学の鈴木輝隆教授

studio-Lの西上ありささん

ワークショップとは、参加者が気兼ねなく意見を交換するための、ゆるやかな会議の形態です。テーブルを島にして膝をつき合わせ、何でも言って良い雰囲気を作ります。従来の会議では発言しにくい立場の人たちからも、意見が出やすくなるメリットがあります。まず、顔見知り同士で座っている席順を変えます。なるべく知らない人と話し、相互理解を深めるためです。40名近い参加者は、誕生日順にグループ分けされました。いったん席を立ったことで、会場の緊張が一気にほぐれたように感じました。

席替えの為に参加者に誕生日を訊く西上さん

1回目のワークショップは「境川の自画持参」というタイトルで行われました。‘自画自賛’にかけて、境川の自慢を持ち寄る企画です。「私の好きな風景」「かってに重要文化財」「残したいもの応援団」をテーマに意見を出し合いました。そして話し合ったことを紙に書いてまとめます。

地元の魅力を書き出します

各班、議論もエキサイト

ワークショップでは、個人が出した意見を全体で共有することが重要です。各班の代表が、前へ出て行って発表を行いました。好きな風景としては、やはり「坊ヶ峯」や「藤垈の滝」があがりました。重要文化財・残したいものとしては、「寺尾分校」や「太々神楽」等があげられました。

班でまとめた意見を全体の前で発表

ワークショップではプレゼンも重要です

発表後、鈴木先生が今回のワークショップの講評をしました。「境川に限らず山梨の人は、発表の内容が真面目でおとなしい。山梨県は立地条件が良いにもかかわらず、地域活性を頑張っている事例が少ないのが残念。もっと思い切った自由な発想が出てきても良いのではないか?」との事でした。そして他地域の具体的な活動例を紹介してくれました。僻地でありながら、のびのびとまちづくりを楽しんでいる人たちの話は、とても刺激になりました。西上さんからは、次回までの宿題が出されました。境川は飯田蛇笏・龍太を輩出した俳句のまちです。この日話し合った境川の良さを織り込んだ俳句を作ってくるように言われました。

第2回:2010年12月14日

第2回の座談会では、最初に俳句の宿題を披露しました。さすが境川住民、俳句上手な人が多くて驚きます。私は今回の宿題のために、生まれて初めて俳句というものを作りましたが、実際に作ってみるとその難しさが良くわかります。この宿題のおかげで、もっと俳句に親しんでみたいと思うようになりました。

自作の俳句を披露

境川には俳句上手が多いです

西上さんが、前回の座談会で出た意見の集計を発表しました。その結果は、とても興味深いものでした。今まで気づかなかった境川住民の特徴がいくつか見つかったのです。

「好きな風景」という項目では「我が家から見る風景」がランキングの上位に入りました。これは予想外の結果でした。西上さんによると、同じ質問に「我が家からの風景」と答える地域は、他所にはほとんど無いのだとか。これは境川の大きな特徴と言えるそうです。西上さんは、そう答えられることに、生活の豊かさを感じると言います。また「かってに重要文化財」の項目では、普通は寺社仏閣などを挙げる人が多いのですが、境川では「昔ながらの近所付き合い」など、人と人のつながりを挙げる人が多かったそうです。同様に「残したいもの応援団」でも、物や場所でなく、人々の行っている活動をあげた人がほとんどだったそうです。境川という所は、自分の住んでいる土地を愛し、人と人の繋がりを大事に思う土地柄なのですね。今まで知らなかった素敵な側面に気付かせてもらえました。

今後やってみたい活動としては「景観づくり」や「ネットワークづくり」「情報発信」があげられました。西上さんは、何のためにそれをしたいのかがまだ明確でないため、なかなか実際の活動に結びつかないのではないかと分析しました。それぞれがバラバラの活動をするとしても、その根底の動機となる、みんなが一丸となって取り組むテーマが必要ではないかと助言してくれました。

「我が家から見る風景」が第2位!

2回目のワークショップは「未来新聞」づくりです。未来のある日の境川新聞の第一面を作るという課題です。班毎に新聞の名前、見出し、記事、広告や社説などを考えます。将来の境川がどうなっていて欲しいのか、イメージを膨らませます。各班、話し合いに熱が入っているようです。大の大人が、まるで小学生に戻ったかのように、ワイワイと盛り上がっています。

グループ内の議論は時に白熱…

時に和気あいあい

境川の未来の新聞を作ります

今回も、出来上がった新聞を全体の前で発表しました。この発表会が、前回とは違ってユーモアたっぷりでとても面白かったのです。出てきた新聞のアイデアを一部ご紹介します。

『坊ヶ峯山頂新聞』『俳キング新聞』『春日山新報』など、新聞名もなかなかいい感じです。一面の見出しには、「リニア乗降者1000万人達成!」「境川に俳句テーマパーク完成!」「大人気!蛇笏・龍太を偲ぶウォーキングツアー」なんて文字が踊っています。

私が素敵だなと思ったのは『境川坊ヶ峯タイムス』の「どこでも縁側カフェ盛況!」という記事でした。我が家から見る風景を自慢に思っている境川の人たちです。どこのお家の縁側も、眺めの良い素敵なカフェになるはずです。このまちにピッタリの企画だと思いました。いつの日か本当に実現できるのではないかと思います。

『坊ヶ峯山頂新聞』「カタクリの里、群生日本一!」

『俳キング新聞』「俳句テーマパーク完成!」

『春日山新報』「リニア乗降者1000万人達成!」

『境川坊ヶ峯タイムス』「どこでも縁側カフェ盛況!」

他にも、地元の中小企業が大企業になっているという設定で広告が出ていたり、架空のみやげ物「リニア煎餅」の広告が載っていたり、住民が俳句コンテストで1000万円の賞金を獲得した記事とか、面白い空想が次から次へと出てきて、会場は大いに盛り上がりました。楽しい上に、将来の境川への希望をしっかりイメージすることができました。

最後に鈴木先生の講評がありました。「境川の人たちは、飯田親子が俳句の中に詠んだような、美しい自然の大きな秩序の中にいるのを感じた。皆が持っている内面的なものを市民活動に盛り込めると良い。それぞれが自発的に、自分が出来ること、得意なことをしていくと楽しくなるだろう」というアドバイスでした。

今回のワークショップ、「境川自画持参」では、境川の良い所を改めて考え、自分たちが何を大切に思い、何を残したいのかを確認できました。2回目の「未来新聞づくり」では、未来のこのまちの姿をイメージし、どうなっていて欲しいのを自覚しました。記事、見出し、広告などを具体的に考えることで、理想のまちにするためには、どんな活動や、どんな施設や、どういう協力が必要になってくるか、ポイントが見えた気がします。そして一番大切なのは、私たちがまちづくりを楽しむことだと気づきました。まちを良くしたい意欲はあるのだけれど、どうすればいいのかわからない。そんな私たちに、進む方向を気づかせてくれました。

講師の2人が、多くのことに気付かせてくれました

座談会を主催した市民活動支援課の皆さん

主催した市民活動支援課では、住民自身でまちづくりを考えるきっかけにしてほしいと、この座談会を企画しました。今後このような自治意識を高める取り組みを、市全体で行って行きたいと考えているそうです。最初の取りかかりに境川町を選んだ理由は、100年以上の歴史のあるまちであり、文化もあり、コミュニティーがよくまとまっているからだとか。この座談会をきっかけにした境川のまちづくりが例となり、いずれは笛吹市全体に波及して欲しいと思っているようです。境川が協働のまちづくりの先進地区となることを期待されているのです。(取材:さっさ)

斬新で楽しい座談会でした

 

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