塩こうじ講習会

講師の五味さんとお友達の北杜市役所の浅川裕介さん、イラストレーターの小倉ヒラクさん

2012年2月29日、芦川農産物直売所おごっそう家で「塩こうじ講習会」が行われました。おごっそう家では月に1度、営業後に勉強会を行っています。今回は今話題の「塩こうじ」を販売している五味醤油株式会社五代目の若旦那、五味仁さんを講師としてお招きしました。

五味醤油株式会社は130年以上も続く老舗のお味噌屋さんです。設立当初は味噌と醤油を製造していましたが、今は味噌を中心に醸造しています。味噌の製造・販売だけでなく、こうじの製造・販売、また手づくり味噌のワークショップなどを県内外の飲食店や教育現場、イベントなどで幅広く活動しています。芦川農産物直売所は、2010年のオープンより手づくり味噌を販売しています。その味噌造りに使うこうじを五味醤油から購入し、混ぜる機械を借りているご縁から、今回の勉強会が実現しました。なぜ今回「塩こうじ」なのかというと、現在直売所では毎週水曜日に1人暮らしのお年寄りにお弁当を届ける活動をしています。今まで作ったお弁当の中で、唐揚げや煮カツを塩こうじで下味を付けたところ、大好評だったそうです。これを機に、お弁当だけでなく塩こうじを使用した加工商品の販売を増やそうと考えているそうです。参加者は芦川農産物直売所加工部のおかあちゃんたちを含め、総勢25名。平均年齢約68歳、なんと最高年齢77歳!とっても賑やかな雰囲気の中で行われました。

手作りの調理帽をかぶっている加工部のおかあちゃんたち

塩こうじの作り方を学ぶ前に、まず味噌の作り方・発酵について学びました。味噌はどうして発酵するのか、こうじはどのような役割なのかをボードでわかりやすく説明してもらいました。その中で、芦川町ではこうじを各家庭で作っていたことが判明!五味さんはものすごく驚かれていました。現在も作っている人はいませんでしたが、芦川の土地柄、ほぼ全員がこうじの作り方を知っていました。これは珍しいことだそうです!

こうじとは米こうじと麦こうじがあり、米と麦を蒸かした物に米の糠にあるこうじ菌を付け、湿度80%以上の部屋に3日間ほど置いて繁殖させたものです。こうじは大豆や米の発酵を促します。こうじには酵素が含まれています。その役割は物に表すとするならば「ハサミ」です。酵素により分解されたデンプンは甘味(糖分)に、タンパク質は旨味(アミノ酸)になります。

ハサミの役割をする酵素

酵素の役割を絵でわかりやすく説明してくれました

さて、山梨県で普段食べられている味噌。これが全国的に珍しいことをご存知ですか?実は山梨県の味噌は「米こうじ」と「麦こうじ」が両方入っている調理味噌なのです。日本人の約80%が米味噌(米こうじ+大豆+塩)だったのです!これには芦川のおかあちゃん達もびっくりです。ちなみに豆味噌(大豆+塩のみ)は八丁味噌だそうです。

ではなぜ米こうじと麦こうじが合わせていたのでしょうか。それは山梨の農業に理由がありました。山梨では果樹産業が盛んな土地ですが、その前は養蚕業が盛んでした。周囲には桑畑が広がり、稲作を主とする農家が少なく、米の生産量が他県に比べて少ない土地でした。本来なら米こうじを使いたかったのですが、米が貴重なために麦こうじも混ぜて味噌をつくったことが始まりだそうです。山梨で食べられている味噌は“甲州みそ”と言います。これは全国的に1%にも満たない、希少価値の高い味噌だそうです。まさに山梨の環境が生んだ非常に珍しい産物です。山梨に住んでいるからこそ、当たり前だと思っていたことが、実はとんでもなく珍しいことだったのです。それを初めて知った芦川のおかあちゃんたちは目を丸くして五味さんの話を聞いていました。

山梨は珍しい“甲州みそ”だと熱く語る五味さん

そしていよいよ塩こうじづくり・・・の前に、塩こうじがなぜ今話題なのでしょうか?塩こうじは新しくできた調味料ではありません。昔から東北の郷土調味料として使われてきました。それに目を付けた大分県のこうじ屋さんが地元の人に知ってもらおうと地元に広め、それを知った東京の料理研究家が本に書き、その本やレシピがテレビによって紹介されてブームを引き起こしました。山梨県でもスーパーや直売所で販売していますが、人気のあまり品薄になっている店舗もあるそうです。話題の塩こうじですが、実は万能な調味料です。塩こうじに含まれる酵素は食材の甘味と旨味を引き出し美味しくさせます。必須アミノ酸9種類が豊富に入っていて、疲労回復・ストレス軽減・便秘解消・老化予防・美肌効果など美容と健康にも期待できる魔法の調味料です。さらに他の発酵食と相性もよく、肉や魚・野菜などを一晩漬け込めば、軟らかくなり旨味が増します。

おかあちゃんたちも真剣に聞いています

今回は五味醤油で販売している「塩こうじキット」を使ってつくります。この日は五味さんが出来たての米こうじを持ってきてくれました。普段米こうじを見る機会がない私たちにとっては、米こうじがどのようなものか気になる方も多いと思います。見た目はお米のパフのようで、触ってみるとフワフワしています。ニオイも思ったよりしませんでした。米こうじを200g、ボールや底の深い皿に用意します。最初、こうじは固まっている状態なので、米粒がバラバラになるようにほぐします。そこに塩60gを加えて混ぜます。混ぜたものを専用のキットに移し、水を200cc注ぎます。今回使用しているこうじは、通常より水分を含んだ状態のこうじなので200ccいれましたが、本来は250cc入れます。少し時間が経つと、こうじが水分を吸ってヒタヒタの状態になりました。そして蓋を閉めて常温で1週間発酵させます。

米こうじを200gずつ計量

この日できたばかりの米こうじ

米こうじはパフのようにふわふわ

米こうじをパラパラの状態にほぐす

そこに塩を入れる

よく混ぜて、専用キットへ移す

米こうじの状態に合わせて水を注ぐ

1週間常温で寝かせて、完成!

発酵中に水とこうじが分離するので、スプーンを使って2日に1回のペースで混ぜて出来上がりです。出来上がった後は、冷蔵庫保存します。今回は専用のキットを用意しました。意外と簡単にできました。おかあちゃんたちも作り終えてご満悦です。まるで生き物を育てる感覚です。1週間後がとっても楽しみですね。

塩こうじ作りを終え、みんなで「手前みそのうた」を観賞しました。この歌は五味醤油が協賛している発酵醸造文化をアート化する「発酵プロジェクト」のテーマソングの第二弾です。シンガーソングライターの森ゆにさんが歌っています。アニメ?ションは五味醤油のホームページやチラシのデザインを担当している小倉ヒラクさんが手がけています。アニメーションの中では講師の五味さんと五味さんの家族が踊っています。歌を聞いた芦川のおかあちゃんたちは「みそ、みそみそ手前みそ~」と一緒に口ずさんで歌ってしまうほど、味噌の魅力に引き込まれていました。

手前みそのうた

塩こうじだけでなく、山梨の味噌の珍しさや発酵食品の魅力について深く学んだ芦川のおかあちゃんたち。今回の講習会でつくった塩こうじを使ってどんな商品が生まれるのでしょうか?今後の芦川農産物直売所おごっそう家に大注目です!(取材:ミーシャ/2012.2-3)

実りある講習会でした

芦川農産物直売所おごっそう家 利用データ

◆住所:笛吹市芦川町上芦川679-1

◆電話:055-298-2820

◆休業日:火曜日

◆営業時間:9:30~17:00(4~10月) 10:00~16:00(11~3月) 

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