川中島合戦戦国絵巻

2010年4月18日、「笛吹市 桃の花まつり」のフィナーレを飾る「川中島合戦戦国絵巻」が笛吹市石和町の笛吹川河川敷で催されました。32回目を迎えた今年は例年よりさらに壮大にスケールアップして武田氏と同盟を結んでいた今川軍、北条軍も参戦。一般募集の参加者ら約900人が武者に扮し、戦国史上最大の死闘といわれた武田・上杉両軍の激突「川中島の合戦」が再現されました。

午前11時半。河川敷に設けられた舞台で神楽の奉納が始まりました。かつて武田信玄が出陣の折に山梨岡神社で神楽を奉納し戦勝を祈願したそうですが、今日は合戦に先立ち甲斐国二ノ宮である御坂町の美和神社の神楽を奉納。色鮮やかな衣装に身を包んだ舞手が笛や太鼓の音色に合わせて華やかな舞を披露しました。

午後1時半。石和町内をパレードしてきた上杉、武田の両軍が観覧席中央の階段を降りてきました。勇壮な音楽が流れる中、まずは毘沙門天の「毘」の軍旗を掲げ上杉方が入場。黒を基調とした武具を身に着けた武者団が笛吹川を渡り、中州の合戦場に入ってきます。続いて、赤が基調の武田軍。「風林火山」を旗印に風の軍団一番隊の飯富隊がまず先陣を切って入場。この後、続々と武田24将が入陣後、信玄公、湖衣姫隊と続き、さらに武田方の援軍に駆けつけた村上、北条、今川の各隊が集結し、合戦場は戦国ムード一色に。

笛吹市長らの挨拶の後、かの有名な「上杉謙信、敵に塩を送る」の逸話に基づいた「献塩の儀」が行われました。国境で上杉方の武将が、武田方の武将に塩俵を渡すという簡単な寸劇で、塩を送る上杉軍からは直江実綱、武田軍からは真田幸隆が登場。合戦場の中央で引渡しの場面が再現されました。続く「古式武道奉納」では、山形県の米沢藩火縄筒保存会の方たちが火縄銃を発砲。もちろん空砲を鳴らすだけですが、ドーンと耳をつんざくような轟音に思わず首をすくめてしまうほどでした。

信玄の「兜装着の儀」の後、陣幕が張り巡らされた両陣営で、武田方では「三献の儀」、上杉方では「武蹄式」といわれる出陣の儀式がそれぞれ行われ、いよいよ決戦の時を迎えます。笛吹川上流側の上杉軍は白頭巾姿の謙信を中心に28将が居並び、前衛に鉄砲隊、槍隊を配した攻撃的な布陣。下流側の武田軍は諏訪法性の兜を着けた信玄の後ろを24将が並び、兵は敵を迎撃すべく横に開いた陣形を敷きました。そうして太鼓の合図とともに攻撃を開始。「上杉軍は車懸りの陣で突撃、対して、鶴翼の陣を張り迎え撃つ武田勢…」というような解説が会場に流れ、祭りとはいえ史実に則った攻撃順や陣形が再現され、見ていて実に感心させられます。

かがり火が焚かれ、白煙が戦場に立ち込める中、川中島合戦最大の見せ場、信玄謙信一騎打ちの場面がやってきました。謙信を乗せた馬が一騎で武田軍に切り込んできました。馬上から太刀を振りかざして斬りつけると、信玄が軍配で受け止めます。一回、二回、そして三回それを繰り返すと謙信は諦めて自陣へと去って行くのでした。かつてテレビなどで何度も見たお馴染みのシーンも、編集なしの一発勝負の実演を見るとなかなかリアルで迫力がありました。

やがて合戦は鉄砲の打ち合いから太刀回りへ。殺陣を演じる久世七曜会(くぜしちようかい)の方たちはテレビや映画で活躍されているプロ集団。さすがと唸らせるキレのある太刀裁きで観客を魅了していました。代わって上杉、武田両軍から二騎ずつ騎馬武者が現れ、迫力ある騎馬合戦を展開。一方、川の浅瀬でも戦闘が繰り広げられています。迫真の演技で槍や刀を交えているのは、地元の石和高校と園芸高校の生徒さんと戦国武装と戦闘を趣味として活動している静岡県の北川隊の方々。川の水はまだ冷たいはずなのに全身水浸しになるなど合戦を大いに盛り上げていました。

合戦はいよいよ大詰め、両軍の総攻撃が始まります。上流側から上杉軍、下流側から武田軍が両大将の「かかれーっ!」の合図で一斉に突撃。双方から怒涛のように軍勢が押し寄せ、中央で激突。現場でカメラを回す私たち取材記者たちは一気に群衆の波に飲まれました。総勢900人の武者が槍を突き上げ、刀を振りかざして激しく入り乱れての大合戦。観覧席からはおそらくテレビや映画で観るのとは違う、桁違いの迫力ある合戦シーンが見られたと思います。映画のスクリーンよりも大きい上に、何といってもライブで観る合戦。かなり壮観な眺めだったのではないでしょうか。

やがて合戦終了の合図とともに両軍が引き上げ、それぞれに勝鬨を上げて合戦が終結。 観覧席からも大きな拍手が起こっています。日が西に傾きはじめた午後3時半。笛吹川を渡り、戦場を後にする武者たち。皆、思い切り合戦を楽しんで満足した様子で、とりわけ女性武者たちの充実感に満ちた生き生きとした表情が印象的でした。今日一日、本物の武者になりきって、誰もふざけたり、しらけたりすることなく最後の最後まで大真面目に楽しんだからこそ見ている観衆にもそれが伝わり、大きな拍手が送られていたのだと思います。(取材:しんたま)

 

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