鶯宿峠で紅葉の山めぐり

今年の紅葉は遅い遅いと言いながらあっという間に盛りを過ぎて、気がつけば昨年と大差ないという感じですね。自然は人の思惑を遥かに超えて、やっぱりすごいです。さて今回は昨年に引き続き、笛吹の山梨百名山のひとつ「滝戸山」へ登ります。この山は標高1221メートルの手ごろな山です。「やまなしの森林100選」に選ばれているミズナラの林があるということなので、紅葉も楽しみです。他にも山のきのこなんか(マツタケとか)採れたらいいなあと、淡い期待を胸に芦川町へ向かいました。

取材日:2010年11月6日(土)

鶯宿峠周辺マップ

滝戸山周辺マップ

鶯宿峠へ

鶯宿峠へ行くには芦川町鶯宿の集落から「大窪鶯宿林道」を境川町方面へ登っていきます。林道入口にはすずらんをかたどった街路灯があり、「鶯宿峠・両面桧」の看板もあります。そこから3キロほど急カーブが連続する細い林道を走りながら、周辺の紅葉具合をチェックすると、まだ少し早いか?という感じでしたが、鶯宿峠に到着する頃には美しい紅葉が広がりました。ただ、今年は猛暑のせいか紅葉も遅く、色づきも例年ほどよくないような気がします。

鶯宿峠への入口。すずらんの街路灯と看板が目印

まるで新緑と見まごうほど軽やかな紅葉

林道脇の木々も次第に秋の色を深めています

鶯宿峠からは境川方面に展望が拓け、素晴らしい眺めです。境川のシンボルでもある坊ヶ峯が眼下に眺められ、遠くは奥秩父の山々や八ヶ岳、南アルプスまで見渡せます。取材日を遡ること3日前にも下見に訪れたのですが、その時の方が空気が澄んで遠くの山々までよく見えました。その日は峠を境川方面へ下ってみたのですが、かなりの距離をトラバースしているので、なかなか高度が下がりません。全面舗装されてはいますが、道幅も狭いので落石や落ち葉の山に要注意!といった林道でした。桃の花の時期にはなかなか楽しいドライブコースかもしれません。

鶯宿峠からの眺望は素晴らしい大パノラマ(この写真は11/3撮影)

同じく鶯宿峠より、真下には境川町のシンボル「坊ヶ峯」が見えます

実は林道最高地点であるこの鶯宿峠は、本来の峠ではないようです。ここから分岐する「名所山林道」を少し進んだところにある「ナンジャモンジャの木」の立つ場所が昔ながらの鶯宿峠です。「名所山林道」は工事中で通行止めのため、歩いて旧峠まで行ってみました。5分ほどで看板が現れ、やや切り通しになったところが本来の鶯宿峠と思われます。その小高くなった脇に立つ、幹周りのどっしりとした大木が「ナンジャモンジャの木」です。全国各地にナンジャモンジャと呼ばれる木があるようですが、芦川町のこの木は植物学者牧野富太郎氏により、ヒノキの変種として「リョウメンヒノキ」と名付けられたそうです。樹齢550年を越えて、この峠道を往く人を見守ってきた大樹です。

名所山林道は工事により通行止め

林道を黒坂峠方面へ歩いていくと、鶯宿峠の看板

私なんかにはヒノキの大木に見えるナンジャモンジャの木。幹も太い立派な樹です

山梨百名山 滝戸山へ登る

さて、旧峠から林道を戻り滝戸山の登山口へ。入口には看板が立っているので迷うことはありません。登山口から階段を少し登ると尾根道に出ます。尾根道を境にして、左手の芦川町側は明るい雑木林、境川町側はヒノキの植林と見事にくっきり分かれています。しばらくすると小さなピークを越えて、周囲は黄葉したクリやミズナラなどの広葉樹林になりました。アカマツの木も多く、今年は豊作といわれるマツタケでもないかと根元を探してみましたが、まったく姿かたちもなし・・・・。なんとなく食べられそうな気がするきのこをひとつ発見するも自信なし・・・。基本的に山のきのこに対して非常に警戒心があるので、マツタケを発見したとしても自信が持てないかもしれません(笑)。それにしても、このあたりの地面はやたらに掘り返されたような跡が見られます。イノシシがマツタケを探して掘り返したのでしょうか?はたまたヒトの仕業か?謎は深まりつつ、きのこ探しにかなりの時間を費やした割には収穫もなく、先を目指します(しょぼーん)。

登山道から入った所に、こんな看板が取り付けられていました

黄葉したクリやミズナラの林は、見事な秋のシンフォニーです

陽に輝いて金色に光る広葉樹の森が続きます

松の根元を探してようやく見つけたきのこ

きのこはユニークなデザインの宝庫

赤松が点在する広くなだらかな地形。きのこがあれば最高でしたが・・・

やがて道はつづら折の急な登り坂となり、昨年登った黒岳の苦しさを思い出しました。そもそもこの滝戸山を選んだのは気軽に登られると思ったからで、こんな筈ではなかったのにと思い始めた頃、やっと頂上が見えてきました。黒岳ほどの苦しさもなく、「滝戸山、楽勝だったな」とほくそ笑んでいたら、なんと言うことか!このピークは山頂ではありませんでした・・・。白木の看板と、破壊されて肝心の山名もわからない黒い道標が立っています。白木の看板には「滝戸山山頂20分」と書かれていました。この先20分・・・・ひどくがっかりして座り込みたくなるのをこらえ、前に進みます。
その時、先を行っていた連れの声が。
「キリギリスがいる!」
・・・・えっ?キリギリス・・・?
見ると美しい黄緑色のバッタが木の枝に佇んでいます。これってキリギリス?なんか違うような気もするけど、とりあえずカメラに収めます。美しいフォルムとひょうきんな顔立ちを猛激写してるのに、枝の上で全く動きません。これから冬が来るのにこんな所にいて大丈夫なのか、それとも弱っているのかと心配になりました。下山の時にも気になって探してみましたが、もう姿はありませんでした。後日インターネットで調べてみたのですが、どうも「ヤマクダマキモドキ」か「サトクダマキモドキ」のどちらかではないかと思います。

この急坂を登りきれば山頂が・・・・?

ツリバナ。実がはじけて真っ赤な種がのぞいていました

じっと不動の姿勢で枝に張り付いていました。鮮やかな色と美しい姿が忘れられません

先ほどのエセ山頂から少し下ると、登山道は広いすり鉢状の地形になり、広葉樹の落ち葉を踏みしめて歩く道です。10分ほどで今度こそ滝戸山の頂上へ到着。先ほどの白木の看板は20分と書いてありましたが、後日調べたら、違う場所に立てられていた看板がどういう訳かあの場所に置かれているようです。山道には混乱するような看板も無いとは限りません。やはりどんな時でもしっかり地図を読むことが大切ですね(って、わたくしは地図も持参し忘れましたけど←救いようがない)。滝戸山の山頂は広く平らになっていて、展望こそありませんが、ミズナラなどの広葉樹に囲まれた気持ちのいい空間です。秋の空は晴れて日差しもあり、黄葉したミズナラの葉が青空に映えます。

滝戸山標高マップ

滝戸山山頂の標識

山頂には先客が。とても絵になる風景でした

黄色なので「燃えるような」とは表現できませんが、美しい黄葉です

やや盛りを過ぎてはいますが、ミズナラが青空に映えます

寄り道しながら登ってきたルートを一目散に下山します。所要30分ほどで登山口へ戻り、展望のいい林道脇のベンチでおにぎりを食べました。ついでに収穫してきたきのこや落ち葉類、スカシダワラなんかを広げて鑑賞。実は滝戸山登山後、名所山林道を車で黒坂峠まで乗りつけ、同じく山梨百名山の「春日山」にも登ろうと思っていました。あいにく名所山林道が通行止めで、林道を歩いて春日山まで往復すると日没になってしまいそうなので、今回は諦めました。その代わり、ちょうど今日・明日と収穫祭が行われている芦川農産物直売所「おごっそう家」へ立ち寄り、一宮町にある市営「ももの里温泉」へ行くことにしました。

本日の収穫物(笑)。スカシダワラと落ち葉群、そしてきのこ

芦川収穫祭と桃の里温泉へ

おごっそう家の駐車場は意外に混んでなかったのですが、すでに商品はほとんど売れてしまっていました。朝から大勢のお客さんで駐車場も満杯だったようです。おごっそう家に隣接する活性化施設の軒先にも陳列棚が並び、たくさんの野菜類が売られていた形跡が・・・。ええ、形跡しかわかりませんでした。直売所という処は朝早く行かないと人気商品を買えませんので、収穫祭も同じ道理ですね。結局今日は何も買わず早々に退去して、ももの里温泉へ向かいます。

芦川農産物直売所の収穫祭。午前中には及ばずとも、そこそこ賑わっていました

一宮町の「ももの里温泉」は、ブドウ畑や桃畑に囲まれたやや高台にあります。桃の花の時期には、ピンクのじゅうたんがひろがる絶好のロケーションです。インターネットのホームページから入浴特別割引券を印刷していくと、通常1000円(一日券)の利用料金が500円になります。また、JAF会員証でも同様の割引を受けられますので、ぜひ活用してくださいね!

この温泉はこぢんまりとしていて、地元の人も利用する「普段着の温泉」です。露天風呂が広くて温度もぬるめなので、ゆったりと長湯を楽しめる点もポイントが高いです。露天風呂にのんびり浸かりながら秋の空を眺めていると、幸福感に包まれます。滝戸山に登ったこと(山梨百名山6座目制覇!)、紅葉の山々を楽しめたこと、マツタケ探しをしたこと(収穫はなかったけど)、「ヤマ(サト?)クダマキモドキ」に出会えたこと、収穫祭が盛況だったこと、みんなよかったなあと思えてきます。暮れていく秋の空を眺めながら、また新たな山へ登ってみようと心に誓うのでした。(取材:ちゃめ)

笛吹市営「ももの里温泉」の看板

露天風呂も広々、ぬるめのお湯が心地良い温泉です

温泉の傍のぶどう棚も紅葉していました

秋の日はつるべ落とし、みるみる暮れていく夕空

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