深沢七郎 生誕100年

2014年1月31日UP

山々に囲まれたとある貧しい村、70歳になった者は、その冬「楢山まいり」と呼ばれる習わしを行うのがその村の掟であった。
……「姥捨て」である。

2014年1月29日、姥捨伝説を題材とした衝撃作『楢山節考』を著した異端の作家・深沢七郎の生誕100年を迎えました。
笛吹市で文学というと、境川出身の偉大な俳人・飯田蛇笏さん、龍太さんの親子が有名です。最近では、吉川英治文学新人賞や直木賞などを受賞し名実ともに人気の高い辻村深月さん。

深沢七郎というと「ああ、『楢山節考』を書いた人でしょ?」地元の人でも名前は知っていてもせいぜいこの程度の知識です。
しかし、掘り下げていくと作家としての才能を開花させる一方で放浪生活を余儀なくされたり、農場や今川焼屋を経営したり、持病に長く苦しまされたりと波乱万丈な人生を送っていました。
人の一生涯は、星の歴史に比べれば儚くも短い刹那の如くですが、深沢七郎生誕100年、この機会に触れてみてはいかがでしょうか?

「楢山祭りが 三度来りゃよ 粟の種から 花が咲く」
「塩屋のおりんさん 運がよい 山へ行く日にゃ 雪が降る」

碑に刻まれているのは、『楢山節考』で「楢山まいり」を告げる唄と、辰平が母おりんを背負い「楢山まいり」を行った際に雪が降った様を歌った唄である。
平成3年、当時の境川村教育委員会により、境川町大黒坂から山間部を走る黒坂里道の入り口に建立された。その理由は、深沢七郎著「『楢山節考』舞台再訪」にあるように『楢山節考』の舞台は信州ではなく、山梨のこの地であることから記念碑として建立された。

碑の裏面には深沢七郎本人による『楢山節考』の解説をした「『楢山節考』舞台再探訪」の一部を抜粋。

解説文

深沢七郎の出身地石和町にある笛吹市立石和図書館では、生誕100周年にちなんだ特設コーナーを用意。

『楢山節考』『笛吹川』はもちろん絶版になってしまっている貴重な蔵書も多数展示。
同郷出身者で辻村深月さんや深沢七郎に影響を受けたとして保坂和志さん(山梨県生まれ)らが山梨日日新聞に寄せた書評なども合わせて展示されている。

石和図書館では、郷土ゆかりの作家の常設コーナーを設けているが、
「今年は深沢七郎さんが生誕100年ということもあり、地元だけでなく来館された県内外から作品を読まれた方や興味を持たれた方々へ発信していきたい。」と話す司書の石倉さん。

プロフィール

深沢七郎(ふかざわ しちろう 1914年1月29日~1987年8月18日)石和町出身。日川中学校(現在の日川高校)卒業。

昭和31年(1956)42歳、『楢山節考』で第1回中央公論新人賞受賞、同作品でデビュー。このときの審査員であった三島由紀夫に高く評価された。
その他『笛吹川』『東京のプリンス』といった代表作がある。

昭和35年(1960)雑誌「中央公論」に発表した『風流夢譚』では物議を醸し嶋中事件へと発展する。これを境に5年ほど放浪生活を過ごすこととなる。

昭和40年(1965)埼玉県菖蒲町(現在の久喜市菖蒲町)で「ラブミー農場」を開く。名称はエルビスプレスリーの名曲"Love Me Tender"に由来。

昭和46年(1971)東京東向島に今川焼屋「夢屋」開店。包装紙のデザインを横尾忠則に依頼。

昭和56年(1981)『みちのくの人形たち』で第17回谷崎潤一郎賞受賞。

昭和62年(1987)心不全により他界。

映画化された作品
◇『楢山節考』昭和33年(1958)監督:木下恵介 出演:田中絹代、高橋貞二
◇『笛吹川』 昭和35年(1960)監督:木下恵介 出演:田村高廣、高峰秀子、六代目市川染五郎
◇『東北の神武たち』昭和32年(1958)監督:市川崑 出演:芥川比呂志(父は龍之介)、左ト全
◇『楢山節考』昭和58年(1983)監督:今村昌平 出演:緒方拳、坂本スミ子
 1983年カンヌ国際映画祭において最高賞パルムドール受賞

山梨県立文学館では、
平成25年度冬の常設展「深沢七郎 生誕100年」を平成26年3月16日(日)まで開催。

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