週末農業を楽しもう!

「週末農業」という言葉をご存知ですか?農家ではない人たちが、週末などの余暇を利用して、趣味として楽しむ農業のことを指した言葉です。笛吹市で畑を借りて果樹栽培を楽しんでいる日野市在住の村松さんご夫妻を取材させていただきました。

【出会いは一通のメール】

私共が村松さんと知り合ったきっかけは一通のメールから。ふえふき旬感ネットでは、毎年春になると、笛吹市内の桃の開花情報を発信しています。おかげさまでこの時期は、全国からたくさんのアクセスをいただいております。ある日、開花情報をご覧いただいた村松さんから、次のようなメールをいただきました。

「奈良原地区の観察写真に自分の畑が写っている。笛吹市外に住んでいて、毎日畑に行くことができないので、行ったついでに撮ってもらえないか?」という内容でした。開花情報がこんなふうにお役にたてるなんて、旬感ネットとしてもうれしい限りです。早速村松さんの畑の桃の木を観察対象として撮影させていただくことになりました。そしてそのご縁で、週末農業の様子を取材させていただいたのです。

奈良原はのどかな山里です

ふえふき旬感ネットの開花情報ページ

村松宏剛さん保子さんご夫妻は、現在、東京都日野市にお住まいです。笛吹市の八代町奈良原地区に畑を借りて、果樹栽培を楽しんでいらっしゃいます。村松さんのように本業ではなく、時間の空いた週末などに趣味で農業をしている人たちのことを、週末農業者と呼んだりします。土に触れ、植物の生長を見守り、手塩にかけた作物を収穫することは、実益だけでなく、精神的な充足感も得られるようです。リタイヤして時間に余裕ができたら、そんなふうにすごしてみたいと夢見る人も多いのではないでしょうか。村松さんは電気通信系の技師をされていましたが、4年前にフルタイムのお仕事を離れ、週末に限らず必要ならば平日にも、奈良原で果樹の手入れをされています。この地に畑を借りたきっかけを伺うと、それは村松さんのお父様の代に遡るそうです。

「父はここ奈良原の出身でした。20歳頃、東京に出たそうですが…。父がリタイヤした後、帰ってきて、ここで畑を借りました。その頃は奈良原に親戚もいましたので…。私たちもずいぶん前から、畑仕事を手伝っていました。15年前に父が亡くなった時、私は畑を返そうかと思いましたが、母と妻がまだ借りたいというので継続することにしました」

開花時期の村松さんの畑

早春の村松さんの畑

地元の方たちとの関係も良好です。畑が道路沿いにあるので、通りかかった地元の人が車を止めて、農作業のアドバイスをしてくれるそうです。奈良原の人はみんな親切で、お父様の友達だった方もいらっしゃるので、あまり気を使わず接することができるそうです。

奥様にお話を伺うと、「この畑があって楽しいです。花もきれいだし、畑仕事は気持ちがいい。お友達に、老後の過ごし方を早くから見つけてよかったねと言われます」とおっしゃっていました。

【果樹園見取り図】

村松さんの畑は約150㎡。早稲の「日川白鳳」の大きな桃の木があります。もうずいぶん長生きの木なので、そろそろ代替が必要だそうです。近くに「ちよひめ」の若木が植えてありました。もう一本の大きな桃の木は「長沢白鳳」。こちらも、かなり年季が入ったりっぱな木です。その他、ネクタリン、スモモ2本(大石、ソルダム)、りんご(サンふじ)、甲州小梅、キウイ、ブルーベリー、柿などが植えてあります。ちょうどいい広さの果樹畑に、色とりどりの果物の木が植えてあって、本当に夢のようで憧れてしまいます。

【作業日記】

(4月21日 摘花作業)

満開の桃の花が、山里を華やかに彩っています。村松さんの畑では摘花作業が行われました。実になった時に良い間隔になるように、下向きの花を残し、他の花を落としていきます。

村松さんに、桃作りの大変な所を伺いました。「やはり土作りが難しいです。地元の人に教わりながら肥料を入れたりしています。それから冬の剪定も難しい。これも教わりながらやってますが、でも最近は自分で独自にやってしまったりしてますね。しょっちゅう来れないので、季節の移り変わりの進捗度がわからないのが困ります。日々の変化を掴むのは、地元の人でさえ苦労しているのに、木の状態が確認できない。冬の間はあまり来ないですが、シーズン中は週一回のペースで、なるべく10日以上間が空かないように心掛けています。」

写真をクリックすると大きい画像で見られます

(5月18日 摘果作業)

抜けるような青い空。畑仕事にもってこいのこの日は、摘果作業が行われました。桃の実は小梅ぐらいの大きさになっています。「思い切って間引きした方が良いとわかっていても、せっかく実った実なので、ついつい残してしまうんです」と奥様。摘果を数回に分けてすると、手間はかかりますが大きい桃が作れるそうです。収穫までは、農薬散布が7~8回。近隣と時期を合わせて行うようにしているとのこと。隣近所でタイミングがずれると、防虫の効果が薄れるからだそうです。「畑仕事は息抜きなんだけど、蒸し暑いときに合羽を着て消毒するのはけっこう大変です。」と笑っておっしゃる村松さん。おととしは、袋を外したら6割が落ちていて、本当にがっかりしたそうです。

写真をクリックすると大きい画像で見られます

(6月5日 袋かけ作業)

毎年村松さんの畑では、袋掛けを3500個ぐらいするそうです。1本の木に400~500個 計7本(内若木2本)という計算です。この日は、日川白鳳に白い一重の袋をかけていました。袋を掛けてしまえば一安心とのこと。この日の作業を見学させてもらいましたが、一つ一つ丁寧に袋をかけていくのは、本当に手間のかかる仕事です。ずっと上を向いているので、首が痛くなってしまうのだそう。

畑にはキウイの雄木と雌木が対で植えてあります。いつも蜂が受粉してくれるのだそうですが、今年は雄木が咲いたのに、雌木がまだ咲かないので、ちょっと心配…とのこと。ブルーベリーの実も大きくなってきましたが、最近、鳥が食べに来るのでネットを張ったそうです。ネクタリン、大石、ソルダムも順調に育っています。柿の花も咲き始めました。

写真をクリックすると大きい画像で見られます

(7月11日 収穫開始)

この日はすごく暑い一日。夏らしいモクモクした入道雲が、青い空を縁取っています。作業はまず、畑の下草刈りから。今年は花の咲く時期は10日ほど遅れていましたが、ここへきて一気に気温が上がり、いつもの年に追いついてきたようです。桃の実(日川白鳳)もかなり大きくなってきました。村松さんのご好意で、もぎたての桃をご馳走していただきました。ちよひめは完熟状態。ものすごく甘い果汁をたっぷり含んでいました。日川白鳳は果肉がなめらかで甘く上品な味わいでした。おいしい桃をいただきながら、村松さんが畑に関する諸々を書き込んだ農業日誌「もも日記」を見せていただきました。日誌には、これまでの作業内容、使用した薬剤などがメモしてあります。びっしりと書き込まれた日誌を拝見して、畑仕事はコツコツと地道に積み重ねていくものなのだなと、改めて思いました。まるで子供の成長日誌のように、愛情の込められたノートでした。

写真をクリックすると大きい画像で見られます

(8月8日 収穫)

いよいよ本格的な収穫が始まりました。 例年、収穫は2500個ぐらいとのこと。一つ一つ丁寧に箱詰めし、親戚や友達や仕事関係の方に送るそうです。大事に大事に育てられた桃は、真心のこもった素敵な贈り物ですね。日川白鳳は生食用ですが、長沢白鳳は肉質が固いので、瓶詰めにするそうです。1リットル瓶で約130本ほどできるとのことです。こうして加工すれば、一年を通して食べられますね。小梅も毎年15キロほど収穫できるので、奥様がお義母様から教わったレシピで漬けて、友人に配られるのだそうです。

写真をクリックすると大きい画像で見られます

村松さんの畑では、いろいろな種類の果実が栽培されていて、まるで「自分だけの夢の果樹園」でした。もちろん、趣味とは言っても果樹栽培は手間のかかるものです。天候にも左右されるし、体力も使い、神経も使います。村松さんご夫妻を取材していると、そのご苦労まで含めて、畑仕事を楽しんでいらっしゃるのではないかと感じました。爽やかな気持ちの良い畑で、すくすくと育つ果実を見ていれば、自然と健康でおおらかな気持ちになれるのでしょう。いつお訪ねしても、お二人とも素敵な笑顔で作業されていました。週末農業は、現代社会において、自然と触れ合う感動を実感できる貴重な機会かもしれません。今、全国的に農業は人手不足です。笛吹市にも、借り手を捜している畑がたくさんありますよ。みなさんも、笛吹で週末農業、始めてみませんか?(取材:さっさ)

毎年桃に同封した村松さん手作りの「桃便り」。2002年版~2005年版。お母様の元気なお姿を必ず載せていたそうです

 

ページトップへ

〒406-0834 山梨県笛吹市八代町岡513-5 Tel.055-287-8851 Fax.055-287-8852
Copyright 2009-2012 Fuefuki-syunkan.net. All Rights Reserved.