No.2 小越幹夫さん
石和町小石和で、ユニークで革新的なスモモ栽培をされている小越幹夫さんをご紹介します。
2月の良く晴れた日、笛吹市石和町小石和でユニークなスモモ栽培をされている小越幹夫さんのハウスをお訪ねしました。
小越さんは6年ほど前から徒長枝を使った独自の仕立て方で、スモモを栽培されています。これは従来の栽培法からみると、常識を覆すようなものだそうです。一般には前年に結果した枝は翌年も使用し、そこから出る徒長した枝の方を剪定します。ところが小越さんの場合、その年の結果枝は切ってしまい、前年立っていた徒長枝をその場所に倒して新たな結果枝とします。つまり毎年新しい枝に実を生らせているのです。「若く太い枝ほど力がある。」と小越さんはおっしゃいます。その枝は、一般的な結果枝に比べてずっと長く、100~120センチくらいあります。長く伸びた枝は、短い枝より花の数が少なく、摘蕾も楽なのだとか。開花に養分をとられないので、実も大きくなるそうです。枝数が少ないので受粉も楽ですし、剪定枝の見極めも難しくないので、誰にでも任せられます。
小越さん曰く「時間も、労力も、頭も使わない、誰にでもできる剪定」なのだそうです。 小越さんのこの画期的な仕立て方は、雑誌「現代農業」で、度々紹介されています。
最近ではこの仕立を学びたいと、島根や兵庫などの県外から視察に訪れる団体もあるそうです。 広いハウス内を拝見させていただくと、確かに良く見るスモモ畑とは違った風景が広がっていました。びゅーんと長く伸びた瑞々しい若い枝が、何本も真横に倒されています。その新しい枝には絶妙な間隔で小さな蕾が並んでいました。
お訪ねしたこの日は、花粉を取る品種の摘蕾作業が行われていました。風船状に膨らんだ花を手作業で摘んでいきます。摘まれた花は、ハウス内に逆さに開いて掛けられた傘の中に集められていきます。
これを機械にかけて花粉をとり、他の品種に受粉させるそうです。この日は天気も良く、午後のハウス内はかなり気温が上がっています。そんな中、汗をかきながら慣れた手つきで一心に花を摘んでいらっしゃる奥様に、「幹夫さんはどんな方ですか?」とお尋ねしてみました。「一つのことに打ち込むと没頭してしまう人」と笑いながら答えて下さったのが印象的でした。
現在の仕立て方は6年ほど前から始められたそうですが、棚作り自体はは27年になるそうです。その間、「常に勉強」とおっしゃって、真剣に果樹栽培に取り組まれてきました。このハウス内の土作りも、ミネラル分が多くなるようにとこだわっていらっしゃいます。どんな分野でも技術を革新させるというのは、膨大なエネルギーと、熱いモチベーションが無ければ成し遂げられません。リスクを恐れず、高みを目指してきた小越さんの情熱が、今、確かに実を結んでいます。
ハウスの中で放し飼いにされている雌鳥の「のろちゃん」が、小越さんの後をひょこひょこついて行く様子がとても微笑ましくて心が和みました。小越さんのお人柄を感じさせる光景でした。(取材:さっさ)